シルビオ・ロルッソ(Silvio Lorusso)
ポルトガルのリスボンを拠点に活動する作家、アーティスト、デザイナー。ヴェネツィア建築大学でデザイン科学の博士号を取得。2018年に最初の著書(共著)『Entreprecariat: Everyone Is an Entrepreneur. Nobody Is Safe.(アントレプレカリアート:誰もが起業家、誰も安全ではない)』を刊行。リスボンにあるルゾフォナ大学の准教授兼センター・フォー・アザー・ワールズ共同ディレクターであり、アイントホーフェン・デザイン学校の情報デザイン科チューターでもある。
デザインにできないこと
Description
デザインに失望したと感じているなら、この本はあなたのためのものだ。
デザインに蔓延する〈幻想〉と〈幻滅〉を解きほぐす歴史的調査:デザインは「再発明」されたのか?──デザインスタディーズ界隈で大きな話題をさらった書、待望の邦訳。
デザインは壊れている。若いデザイナーも、それほど若くないデザイナーも、そのことをますます認識しつつある。多くのデザイナーたちは無力感を抱いている。デザインというツールで世界をより良い場所にできると思っていたのに、実際にはその世界に苦しめられている。誇大広告と大胆な主張という煙幕の向こう側には、自信喪失と燃え尽き症候群という不毛の地が広がっている──ミレニアル世代にとっては当たり前のことかもしれないが、こうした感覚はデザイン文化によって強められている。
本書では、デジタルによる半自動化によって引き起こされる専門技術の解体、美術館・博物館や教育機関を満足させるために作られた装飾的な政治の実例、デザインスクールにおける曖昧な約束といったテーマを掘り下げ、デザインへの幻滅の歴史を多様な専門家の言説を手がかりに紐解きながら、現代のミームやソーシャルメディアにあふれるデザインへの暴言にも向き合う。
「世界を変えられる」と大きな期待を寄せられたデザインという魔法は、本当に世界をより良く変えたのだろうか。デザインがみんなのものになったのだとしたら、デザイナーの立場や役割が変わったのだろうか。拡がり続けるデザイン分野を総覧し、デザイナーが抱えるフラストレーションを検証し、デザインの純粋な可能性を探る一冊。
ISBN:978-4-8025-1247-3
定価:本体3,200円+税
仕様:A5判変型/352ページ
発売日:2024年11月20日
著者:シルビオ・ロルッソ
翻訳:牧尾晴喜
デザイン:畑ユリエ
Profile
Contents
プロローグ:スターターパック
第 1 章 | 中間層
〜 第 1 部 期待 〜
第 2 章 | すべてのものと人が一緒に(エブリシング・エブリワン・オール・アット・ワンス):デザイン・パニズム
第 3 章 | 統合と自律の複雑な関係
第 4 章 | 会議のテーブルをひっくり返す:権力と無力さについて
〜 第 2 部 現実 〜
第 5 章 | 形態はフォーマットに従う:セミオートメーションと文化的プロフェッショナリズム
第 6 章 | 新たな差異としての批評性:装飾としての政治とスキルとしてのアイデンティティ
第 7 章 | 現実世界としての学校:願望と妥協について
エピローグ:レイジクイット