ALIFE | 人工生命 より生命的なAIへ
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ALIFE | 人工生命
より生命的なAIへ

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¥2,860 (税込み)

Description

本書は、ALIFE=人工生命の入門書です。

「人工生命」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人工知能(Artificial Intelligence:AI)ではなく「人工生命(Artificial Life:略してALife)」。人工知能が「人工的につくられた人間のような知能」であるとすると、人工生命とは「人工的につくられた生物のような生命」のことを指すといえます。人工知能研究者が、人間のような知能をコンピュータで実現できると考えているように、人工生命研究者は、自然の進化が生み出すような終わりのない(=オープンエンドな)進化をコンピュータで実現できると考えています。

オープンエンドな自然の進化が生み出してきた多様な生物をみると、その創造力は計り知れません。これをアルゴリズムに落とし込めれば、新しい商品をつくる、新しいデザインをつくる、新しい研究のアイデアをつくるといった、斬新なサービスや技術を次々と生み出すようになるかもしれません。ビデオゲームやVR、ARの世界は、自然の生態系のような豊かさをもち、果てしない冒険と発見を提供するようになるでしょう。多様性をもった解を導き出せるようになることは、多様性を受け入れる世界をつくることにもつながるはずです。

今、人工知能研究をリードする世界の研究組織が、学習し続ける「オープンエンドなシステム」をつくるための重要な技術として、人工生命に注目し始めています。人工生命は、わたしたちの創造性を拡張し、より生きやすい社会を目指すうえでブレイクスルーとなるアプローチです。また、膨大なデータが前提となる現在の人工知能技術において、世界に遅れをとっているといわれる日本が、巻き返しを図る糸口にもなります。

本書は、人工知能や人工生命の知識がない方にも、人工生命が何であるか、どのような研究やアルゴリズムを辿ってきたか、どう役立てられるかを理解いただけるよう、わかりやすく解説しています。人工知能をすでにビジネスに取り入れている方や、人工知能の研究開発を行う研究者、エンジニア、学生の方々、こうした技術を取り入れたいと思っているクリエイターの方、そして人工生命という分野を耳にしたことのある方にとっても、先見性をもってご自身の取り組みを発展させることに役立てていただけるはずです。

ISBN:978-4-8025-1126-1
定価:本体2,600円+税
仕様:A5判/240ページ
発売日:2022年03月16日
著者:岡瑞起
デザイン:上坊菜々子

Profile

岡瑞起(おか・みずき)
研究者
筑波大学システム情報系 准教授 / 株式会社ブランクスペース技術顧問

2003年、筑波大学第三学群情報学類卒業。2008年、同大学院博士課程修了。博士(工学)。同年より東京大学 知の構造化センター特任研究員。2013年、筑波大学システム情報系 助教を経て現職。

専門分野は、人工生命、ウェブサイエンス、データサイエンス。人工知能学会にて「人工生命研究会」の主査。人工知能学会編集委員。人工生命の国際論文誌『Artificial Life Journal』アソシエイトエディター。(独)情報処理推進機構未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャー。人工知能学会「現場イノベーション賞」、情報処理学会「論文賞」「山下記念研究賞」など受賞多数。

人工生命技術、機械学習、深層学習を使ったデータ分析・活用の研究を行う。大学での研究をベースに、新しい技術の社会実装に力を入れている。共著書に『作って動かすALife─実装を通した人工生命モデル理論入門』(オライリージャパン)がある。

Contents

Chapter 1
人工生命とは何か

1-1 新たな自然をつくり出す
生命を人工的に再現する/人工生命のパイオニア/強いALifeと弱いALife/構成論的な対象の理解/人工生命のグランドチャレンジ:オープンエンドな進化/人工生命の5つのレベル

Chapter 2
身体性

2-1 身体と環境がつくり出す創発現象
身体を通じて環境を知覚する/身体性が異なると環世界も異なる/身体化された認知/ロドニー・ブルックスが唱えた「表象なき知性」

2-2 人工進化で創発をデザインする
遺伝的アルゴリズム/人間のバイアスを取り除く/進化する仮想生物

2-3 ソフトな仮想生物
仮想生物の進化が直面した課題/ニューラルネットワークを進化させる/幾何学的なパターンをコンパクトに表現する/シムズを超える仮想生物の誕生

Chapter 3
相互作用

3-1 個体間の相互作用がつくる創発現象
集団がつくる新たな振る舞い/エージェント・ベース・モデル/生命のパターンをつくり出すライフゲーム/群れをシミュレーションするボイドモデル

3-2 自然界における鳥の群れ
トップダウンからボトムアップな理解へ/鳥の群れとボイドモデル/一羽の動きが群れ全体に伝わる/モデル自体の探求が新たな理解をもたらす

3-3 協調的な集団
対立する個人の利益と社会の利益/囚人のジレンマゲーム/繰り返しの囚人のジレンマゲーム/寛容さが強みとなる「しっぺ返し戦略」/架空の選手権/ノイズ入りの囚人のジレンマゲーム/ノイズが進化の鍵となる    

Chapter 4
集団の進化

4-1 自己複製のエラーがもたらす進化
人工生命が直面する進化の課題/進化の根幹をなす「エラー」/進化の可視化/フォン・ノイマンの自己複製オートマトン/自己複製から進化の研究へ/進化の鍵を握る寄生体

4-2 集団として進化する
試験管内で進化するRNA/寄生体を取り込んで進化する/自己複製から他者を取り込んだ進化へ/宿主と寄生体の共生条件

Chapter 5
インターネットの進化

5-1 インターネットの生命性
生命圏を築くインターネット/「カオスの縁」へ向かうインターネット/ソーシャルメディアの臨界現象/システムの適応性を高める「キーストーン種」/不安定だからこそつくられる安定

5-2 新しさをつくり出すメカニズム
文化の遺伝子ミーム/進化するミーム/すでに人気のミームにはさらに人気が集まる/新しいミームは隣接可能空間で生まれる/直感に従えば新しいアイデアが見つかる/隣接可能空間の妥当性/新しいものが「バズる」仕組み

Chapter 6
オープンエンドな進化

6-1 人工生命が目指すオープンエンドな進化
集合知から考える発散的な探索/群衆の知恵と集団的知性/収束型の集合知と発散型の集合知/発散的な探索を実現するために/共通の目的をもたない

6-2 発散型の探索をコンピュータで実現する
遺伝的アルゴリズム──収束的な探索/過去と現在を比べる/目的は誤ったコンパスになる/単純なものから複雑なものへ/思わぬ行動が目標達成の足がかりに

6-3 競争を避け共存する
生態学的ニッチ──多様な生物が共存できる仕組み/競争を避けて多様性を生み出す/多様性と品質のバランスをとる/故障しても歩き続けられるロボット/偶然を呼び寄せる/イノベーションは一直線には進まない

6-4 環境の変化が進化を促す
脳と環境の共進化/新しい環境で試す/新しい環境の生成/難しい課題は直接解決できない/オープンエンドな進化アルゴリズムの実現に向けて    

Chapter 7
より生命的なAIへ

7-1 人工知能から人工生命へ
人工生命と人工知能の融合/深層学習を取り入れ進化する人工生命/ルールを自動学習するセルラー・オートマトン/深層学習の課題を解決する人工生命/環境の変化に適応する人工生命/少ないヒントから答えを導く人工生命/より生命的なAI、より生命的な人へ

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